第14回『このミス』大賞 1次選考通過作品 秋多川祥二

学園祭の準備日にトラブルが頻発
実行委員長が奔走する青春ミステリー

『準備日の五階』秋多川祥二

 自主的な学園祭で知られる文法大学は学生運動家に悩まされていた。学園祭実行委員長・枕木は説明会で彼らの排除を決定し、中核派の竹内を軸とする”社会文化研究会”の恨みを買う。そして準備日──学内で不審者が目撃されたものの、枕木は当局と話し合い、学園祭の実施を宣言する。その直後、校舎B棟の五階が停電し、チアリーディング部からアンダースコートが盗まれ、部員の幸枝が行方不明になった。ほどなく幸枝は救出されるが、大学に爆弾を仕掛けたという脅迫が届き、枕木は全校の人間を避難させる。そこへ自暴自棄になった竹内たちが乱入し、事態はさらに混迷の度を増していく。
 学園祭の準備日を背景として、続発するトラブルとその解決を描く学園ミステリー。不可解な窃盗、学生の失踪、ビラ剥がし事件、活動家のクーデターなどを詰め込み、タイムリミットを伴う厄介事を次々に繰り出すプロットは、平易な文章と相まって読者を飽きさせない。必ずしも現実的ではないが、終盤の”学園祭を行うための論戦”も読後感の良さに繋がっている。
 学内レベルを超える思惑を仄めかし、伝説的な実行委員のエピソードで幕を下ろす構成も併せて、エンタテインメントのツボを押さえた設計には好感が持てる。米澤穂信『クドリャフカの順番』や似鳥鶏『いわゆる天使の文化祭』が好きな人は、同系統の作品として楽しめるだろう。

(福井健太)

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