第14回『このミス』大賞 1次選考通過作品 橿真由宇

危険に晒された生命が見える
過酷な宿命を負った少年のドラマ

『僕の人生は君が未来へ ~You’ll tell our future beyond my life~』橿真由宇

 高校生の「僕」こと碧森拓哉は”生命の危機を予知する能力”の持ち主だった。公園の子供を守って怪我をした拓哉は、病院でフリーライターの山口吾朗に逢い、かつて拓哉の父・俊雄を取材したと聞かされる。山口は能力の存在を察しているらしい。拓哉は一族の秘密──俊雄が女子高生を救うために事故死した後、能力が自分に継がれたことを隠そうとするものの、山口の眼前で友人を助けてしまう。山口の理解と協力を得た拓哉は、話を聞くために親戚を訪ねようとした矢先、空港で飛行機事故を予見するのだった。
 生命の危機を”知ってしまう”宿命を強いられた少年が、苦悩を抱えながらも意志を貫く物語である。能力の設定に新味はないが、特異性から生じるシチュエーションや葛藤の掘り下げに徹した作りは好ましい。主人公(の一族)が利他的に過ぎる感はあるにせよ、同級生を見捨てるエピソードや恋愛を織り込み、人間味を醸そうとした姿勢も評価されるべきだろう。
 メインストーリーは「山口吾郎が、碧森拓哉本人から直接聞いた話を、文章として書き起こしたもの」だという体裁を採り、送り手と受け手を”枠の外”に配した構成も、オーソドックスなりに効果を上げている。プロットの一本道ぶりは気になるが、いわゆる感動系としては及第点。映像作品の素材にも使えそうだ。

(福井健太)

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