第11回『このミス』大賞 1次通過作品 神待ち

家出少女を自宅に監禁し、拘束と監視を続ける高校教師。
2人の歪んだ関係の終着点は……。
閉塞感を通じて“開放”を描く心理サスペンス

『神待ち』 穂並了

 進学校の男性教師である「私」こと高橋は、出会い系サイトで知った家出女子高生“アヤ”に「ベッドと食事をくれるなら、あなたの思うように飼われてあげる」と言われ、その提案を飲むことにした。高橋はアヤに外出を禁じ、ネットワークカメラを使った観察に没頭していく。やがて高橋は友人の裏切りを知り、酔った勢いでアヤに手錠を掛けて拘束を始めるが……それはもはや愉悦ではなく、自分の立場を守るための苦行に過ぎなかった。
 タイトルの「神待ち」は“男が家出少女を家に泊める援助交際”のこと。教師が少女を監禁・監視するという状況下において、2人の関係性を綴った『完全なる飼育』テーマのサスペンスだ。プロットは直線的なもので、表立った事件はクライマックスまで発生しない。利己的な語り手と自宅を拒む少女の醸す空気――その息苦しさの堆積こそが本作の見所であり、閉塞感によって破滅の予感を強調したうえで、著者は複数の“解放”を描き出している。
 ただし別の見方をすれば、これはエンタテインメント性の弱さにも繋がっている。動きに乏しい陰鬱な話が(ようやく)局面を変えたところで終わる構成は、意図的な判断ではあるにせよ、明快な娯楽性とは縁遠いものだ。別名義でデビューしている著者には相応の表現力が伺えるが、だからこそ娯楽性への意識を求めておきたい。

(福井健太)

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