第11回『このミス』大賞 1次通過作品 神様による猫色の日々

“連続殺猫犯”は誰なのか?
猫と話せる少年が真相を追う
大胆な趣向を秘めたファンタジック・ミステリー

『神様による猫色の日々』 彼方宗一郎

 野良猫を助けようとした高校生・高崎洋一が交通事故に遭い、巻き添えになった飼い猫リブが死亡した。町では五件の“仔猫殺し”が起きており、猫の言葉を解する洋一は、幽霊になったリブとともに調査を続けていく。そんなある日、幼馴染み・佐々木優美の飼い猫ミイのバラバラ死体が発見された。洋一の弟・秀介と優美が町内を巡回するものの、さらに凶行が繰り返され、洋一とリブは目撃者であるミイの幽霊に話を聞こうとする。
 高校生と猫の幽霊が“連続殺猫犯”を追うファンタジック・ミステリー。残忍な事件を扱いながらも、リズミカルな文章と戯画化された猫たちの姿を介して、浮き世離れしたムードのエンタテインメントになり得ている。客観的には嫌な話だが――プロローグからエピローグまで――軽さの演出に徹したスキルは高評価。2つのチームの配置も計算されたものだ。
 本格ミステリーとして見た場合、犯人に辿り着くプロセスが単純な印象は否めない。結末の仕掛けにも(もはや類型的なため)狙いほどの意外性は無いが、それを物語の根幹に繋げた構成は正解だろう。いくつかの疵はあるにせよ、著者が十代と若いことも併せて、期待点込みで推しておきたい。

(福井健太)

通過作品一覧に戻る