第11回『このミス』大賞 1次通過作品 夏桜

姉に会いに瀬戸内海に浮かぶ島に行った修だが、
島民間の対立に巻き込まれ、ついには死体が出た!
事件を通じて少年は大人の世界を垣間見る

『夏桜』 三瀬近江

 両親の反対を押し切り入ったばかりの大学もやめて学生結婚し、お腹の子供ともども音信不通になっていた姉から六年ぶりに届いた手紙。そこには現在の住所とともに、娘も元気なので一度遊びに来て欲しい旨が記されていた。複雑な思いを抱える父母の替わりに神谷修は、大学の夏休みを利用して、彼女らが暮らす瀬戸内海に浮かぶ人口2000人ばかりの小さな島・亀島を訪れる。だがアパートには人気はなく、大家からは数日前に引っ越したばかりだと告げられる。なぜ、このタイミングで?
 不審に思う修は、島に向かう船の中で親しくなった地元の少女・千早の助けを借りて姉の行方を探るうちに、スーパーマーケット誘致を巡る島民間の対立に巻き込まれていく。やがて二つの線が交わり事態は思わぬ方向へと進み、ついには死体が。
 18歳の少年が、失踪した六つ年上の姉の背中を追うなかで、悪意や妄念、欲望や野心といった様々な人生の苦みを体験し、大人の世界を垣間見る一夏の物語。青春小説の定番とも言えるテーマと謎解きミステリの妙味を上手く融合させた作品です。ちょっと憂いを秘めた文章も作品の内容とマッチして効果的。若干作者の都合による偶然が設定上見られますが、1次を通過するには十分な出来と思います。

(膳所善造)

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