第11回『このミス』大賞 1次通過作品 りらいと

脳内に蓄積された記憶の読み取りに成功した世界で、
脳研究員の赤坂は、妙にリアルな悪夢を見る……。
自身も知らない“自分”をめぐる、近未来SFサスペンス

『りらいと』 葉月瀬人

 脳の解析が急速に進んだ近未来。世界的大企業イマジン社は、「ブレインスキャナー」なるマシンを開発し、脳全体の神経回路、神経細胞のネットワークを可視化するとともに、脳内に蓄積された記憶情報の読み取りに成功する。同社の関東地区研究所に勤める赤城は、ある夜、妙にリアルな悪夢を見て飛び起きる。痛みこそなかったものの、手術によって胸部になにかを埋め込まれる鈍い感覚……。そして翌日、赤城は偶然にも研究所のデータベースから、自分と神経回路がほとんど一致し、しかもアクセスが許されない謎の記録を発見する。これが自分の記録だとしたら、いまの自分はだれなんだ? 不審に思った赤城は独自に調査を開始するが、たちまち黒服の男たちが現れ、追われる身となってしまう――。
 『バイオハザード』のアンブレラ社のような世界的大企業が牛耳る近未来を舞台にしたSFサスペンス。『トータル・リコール』と『マトリックス』を容易に想像させるストーリー展開といい、それを終盤のあるセリフで開き直り、そのままダークな結末へと着地してしまうまさかの荒技といい、正直文句がないわけではない。しかし、今回読んだ応募作のなかでは、描写力に優れ、シーンの印象づけや盛り上げ方も悪くなく、不自然な会話でテンポが乱れるようなこともない、もっとも“読ませること”に気を配ったエンターテインメントとして好感が持てた。かなりギリギリの及第点だが、本作を2次に推す。

(宇田川拓也)

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