第8回『このミス』大賞 次回作に期待 北原尚彦氏コメント

『女神のチェスゲーム』山田孔明
『ボコデコ』志士牧さとう

北原尚彦コメント

 今回惜しくも「次回作に期待」となったのは、まず『女神のチェスゲーム』(山田孔明)。小笠原裕美は、高校時代に失踪した父を探すために警察官となり、やがて探偵会社IHQ社を作った。同社が11年前の「東神田路上生活者変死事件」を調べ始めると、様々な重大な事実が明らかになっていく……。
 設定、登場人物、物語の展開など、テレビのサスペンスドラマならばアリかもしれないが、小説としてミステリーの賞を取るには不足がある。いずれの面においても、もっと小説ならではの深みを増して欲しい。
 それからもうひとつは、『ボコデコ』(志士牧さとう)。平凡な生活を送る田中一郎(高二)は、肉体的な秘密を持っていた。その秘密が、学校一の人気女子・棟田若菜にバレてしまった。これをきっかけに、一郎は若菜と付き合うことになるが……。
 日常を舞台にしたミステリーだろう、いつ事件が起こるのか——と思っていたら、最後まで事件は起きなかった。これは恋愛小説だったのだ。
 ラブコメディ、恋愛小説としてはきちんと完成しているし、商業出版されていても不思議はないくらいだ。しかし、これでミステリーの賞を取ることはさすがに難しいだろう。あなたは作家になれるかもしれないが、ミステリー作家ではないでしょう。別な小説賞に応募されることをお奨めしておきます。
 最後に。今回は枚数の規定から外れている作品を、多く担当した。まず、明らかに枚数不足なのに、意味のない改行をたくさん入れて(つまり行間を広く空けて)、枚数を増やしてあったもの。水増しをしていることは一目瞭然ですから、無駄な努力です。短いものしか書けないなら、短篇の賞に応募すべきです。
 そして、逆に枚数をオーバーしているもの。規定に外れているわけだから、読まれずにはじかれることすらあり得るということにご注意を。幸運にも読んでもらえたとしても、その分最初からハンデを抱えることになります。小説だって「商品」です。規格外の商品は売りにくいということを頭において下さい。
 とにかく規定をよく読んで、自分の原稿もよく読み返して、それから応募して下さい。

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