第8回『このミス』大賞 1次通過作品 20

偶発的な事故を装って殺す、殺し屋の「死神」。
一方で、二人の刑事が17年前に起きた殺人事件の再調査を始め、
やがて二人は死神へと繋がっていく……。

『死亡フラグが立ちました!』 北原尚彦

 都市伝説テーマのオカルト雑誌『アーバン・レジェンド』に記事を書くフリーライターの陣内は、「死神」と呼ばれる殺し屋の存在を知った。「死神」のターゲットとなった人物は、トランプのジョーカーを受け取る。この予告状が届くと、二十四時間以内に死ぬことになる。銃や刃物によるのではなく、偶発的な事故によって。
 版元と同じビルで金貸しをしているヤクザの松重は、最近死んだ自分の組長が「死神」に殺されたのだと陣内に語った。だが防犯カメラの映像を見ても、たまたま転倒して頭の打ち所が悪かったとしか陣内には思えなかった。異様な洞察力の持ち主である高校時代の先輩・本宮に陣内が相談を持ちかけたところ、本宮は映像の中からサブリミナル画像を見つけ出した。
 一方、十七年前に「田中一家殺人事件」でクラスメイトを失った御室恵介は現在、刑事になっていた。御室がコンビを組んだ先輩刑事の板橋が当時、田中家の事件を担当していたことから、二人はかつての結論に疑惑を抱き、改めて調査を始める。それは、殺し屋へとつながる道だった……。
 偶然を装って人を殺そうとする——というところは、藤子・F・不二雄の異色短篇マンガが想起させられるが、本作ではそれを殺し屋が行う、というのがすごい。
 殺し屋が殺し屋となった理由がもっと何か欲しいところではあるし、その「用意された偶然性」が余りにも偶然すぎる感はあるが、テーマ的には非常に『このミステリーがすごい!』大賞向けだ。1次選考を通過させないわけにはいくまい。
 枚数をオーバーしていたのはマイナス。どうしてもその枚数でなければテーマを書ききれない、という場合もあろうが、本作では削ぎ落とす余地はありそうだ。とにかく、賞を取りたければ応募規定を守るにこしたことはないのである。

(北原尚彦)

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