第7回『このミス』大賞 次回作に期待 北原尚彦氏コメント

『十年後の同じ日に』 結城泉
『ゴムの棘のやまあらし』 渡村たくほ
『鏡の国の氷美人』 城里田圭

北原尚彦コメント

今回惜しくも「次回作に期待」となったのは、まず『十年後の同じ日に』(結城泉)。

ある朝主人公が目覚めると、そこは十年後(2003年)の世界。自分も十年歳をとっている。だが翌朝目覚めると、それは元の時代(1993年)、元の自分。それが交互に繰り返される。しかし好意を寄せる女性が、1993年の世界で間もなく殺されることを知り、阻止しようとするが……という話。

設定は魅力的だし、(散見される初歩的なタイプミスを除けば)文体も読みやすい。だが、改稿の段階で混ぜこぜにしてしまったのか、似ているけれども異なる文章が混在してしまい、訳が分からなくなってしまっているパートがある——という時点で残念ながらアウト。応募原稿は必ず読み返して確認することが肝要。タイプミスも無くせたはず。また、やや冗長な部分もあるので、全体に刈り込めばもっとすっきりすると思う。

『ゴムの棘のやまあらし』(渡村たくほ)は、夫婦合作による作品。

主人公は、三人の中学二年生。他人の思念が勝手に頭の中に流れ込んでくるようになり、混乱している北村拓磨。同じ力を持っているけれども、能力 を代々受け継いでいるためにコントロールできる流照臣。照臣の幼馴染で、特殊能力は所持していないが明るい冨永太咲。彼ら三人は、記憶喪失の路上生活者 「学じいさん」と知り合い、彼の過去を調べようとするが……という話。

ほのぼのとしていい作風ではあるのだが、キャラクターやストーリー上の出来事など、微妙に掘り下げが浅い。もう少し深みを増すと、ぐんと読者を惹きつけることができるはず。

『鏡の国の氷美人』は、北海道の網走を舞台にした作品。

国語教師の私は、網走湖でワカサギ釣りをしていて、氷の下に一人の女性を見出した。その女性に魅入られたわたしは、そのことを誰にも言わなかった。

翌日、私は一人の女性が行方不明になっていることを知った……。
主人公の歪んだ視点など、興味深い作品ではあったが、肝心の謎が「偶然」にばかり頼っていたところが残念だった。本作の主眼はそこにないのかも しれないが、非常に魅力的な謎を(それもふたつも)提示されては、読者はそこに大いなる期待を抱いてしまうもの。

その他、時代小説やSFの賞に応募したほうがよさそうな作品もあった。賞の傾向に合わせて作品を執筆する、もしくは逆に書き上げた作品に最も合致しそうな賞を選ぶ、というのも重要なことである。

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