第7回『このミス』大賞 1次通過作品

『臨床真理士』 藤木祐子

 『チーム・バチスタの栄光』と同じく、医療の現場を扱ったミステリーである。だがこちらは精神科や障害者施設が舞台、主人公の砂野美帆は臨床心理士と、一味違う。

 砂野美帆は、勤務先の医療機関で、藤木司という十九歳の青年を担当することになった。司は、人が喋っている言葉が色に見えるという。司には好意を寄せている水木彩という少女がいたが、彼女はリストカットをして救急車で搬送中に死亡した。だが司はその能力によって、彩が自殺するはずがないことを知っている、と主張した。

 美帆はその主張をすぐに信じることは出来なかったが、かつて自分の弟が精神病を患った末に自殺したという経験をしていたため、司の治療のためにも調査をしてみようと決意する。美帆は、かつての同級生で現在は警察官である栗原久志の協力を仰いだ。調査を進めるにつれて明らかになっていく、驚くべき真実とは……。

 現実離れした特殊な力の持ち主である司と、リアルな臨床心理士である美帆という組み合わせが、よく考えられている。ストーリーの展開も、特殊能力をご都合主義的に濫用することなく、現実との地続き感を失わぬように構築されている。

 また美帆と司をはじめ、彩や栗原、その他のキャラクターたちがきちんと描き出されているところにも好感が持てた。文章を書きなれているようだが、山形新聞の「山新文学賞」入賞経験があるとのこと。これは第3回『このミス』大賞を『果てしなき渇き』で勝ち得た深町秋生氏も受賞した賞ではないか。エピローグが弱いという瑕疵はあるけれども、2次選考へ進出するには、十分にハードルを超えているだろう。

(北原尚彦)

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