第7回『このミス』大賞 1次通過作品
『暁光の誓い』 竪山利治
初めに断っておきますが、この作品には、目新しいものは何一つとしてありません。その代わり、娯楽小説として押さえるべきポイントは、きっちりと押さえています。ネタの新鮮さに振り回されて、小説としての基本的な要件を疎かにするという、1次予選を突破できない応募作にありがちな瑕疵は、ここには見られません。ウェルメイドなハードボイルド小説といえるでしょう。
謎の男がもたらした友人・俊樹の死の知らせ。大学時代ともにラグビーにかけた親友が、不名誉な事故——泥酔した上で車を運転し、ホステスと一緒に崖から墜落——のあげく死んだとして処理されたことに不審の念を覚えた主人公・浅木は、俊樹が旅館の亭主として暮らしていた寂れた海辺の観光地に乗り込み、様々な妨害に遭いながらも、事件の背後にうごめく不正を暴き、死者の名誉を回復する。
繰り返しになりますが、過去何百回と書かれてきたタイプの作品です。にもかかわらず、1次を通したのは、基本がしっかりとしているからです。一人称一視点をしっかりと貫き、浅木の行動原理にぶれがない点、駐在所勤務のしたたかな警官・岸田を初めとして癖のある脇役を描き分け、作品に血肉を与えている点。そして俊樹の死の真相を彼の義理の娘・里美に伝えることで、彼女の心の傷を癒している点、この三点に特に感心しました。
一つ注文をつけるとすれば、タイトルでしょうか。クライマックスのサブタイトルとしてはありですが、臭すぎます。一歩自作から退いて、作品全体を俯瞰した題名にした方がよいでしょう。
(膳所善造)















