第7回『このミス』大賞 1次通過作品

『禁じられた街』 梅津俊紀

 若い女性を殺害してから喉を切り裂き、その血液を抜き取る──西十崎市で相次いで起きた二件の殺人事件の犯人は、その手口から「吸血鬼」と呼ばれるようになった。刑事の本城友季恵は、コンビニ強盗逮捕時に犯したミスのせいで直接の捜査参加を阻まれていたが、大学院で犯罪心理学を学ぶ日比生鑑の力を借りて「吸血鬼」を追う……。

 吸血鬼ホラーではなく、猟奇殺人者を追う警察の捜査を描いた作品である。物語の枠組み自体は、すでに多くの作品で使い古されたもの。ことさら新鮮味があるわけではない本作をそれでも推すのは、全体のバランスのよさにある。

 例えば、キャラクターの造形。敏腕刑事であり、一方で他人には打ち明けがたい秘密を抱えた友季恵。彼女の捜査活動をチェックする、友季恵にとってはきわめて煙たい存在のエリート女性検事。一見頼りなさそうだが、優れた知性で友季恵をサポートする日比生。そんな主要人物たちの人物像はいずれも明快で、作中での役割分担もある程度ははっきりしている。わかりやすいキャラクターを配して、物語は軽快に進んでいく(もちろん、捜査は難航するのだが)。

 終盤にも、ちょっとした驚きが用意されている。ミステリらしい稚気を感じさせる、意外な展開だ。ただし、きわめて誠実に伏線を張っているせいか、仕掛けに気づいてしまう読者も少なくないだろう。

 バランスがとれているだけに、もっと過剰さを取り入れてもよかったのでは……と思う部分もあるが、まずは均整のとれたつくりを評価したい。細部に粗さの目立つ作品ではあるが、物語の成立自体を危うくするレベルではないと考えている。

(古山裕樹)

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