第7回『このミス』大賞 1次通過作品

『屋上ミサイル』 山下貴光

 アメリカ大統領がテロ組織に拉致された。テロ組織は大統領と共に米国北西部の軍事基地に立ちこもったが——日本の高校生たちにとって、それはまだまだ対岸の火事であった。彼等には、もっと身近なことの方が重要であった。例えば、校舎の屋上でスケッチをすることであるとか。

 屋上に上ったわたしこと辻尾アカネは、同じく二年生で、昼食後の屋上でのんびりすることを日課としている国重嘉人や、屋上から思いを寄せる人を見守り続ける沢木淳之介、そして屋上のフェンスを乗り越えその外側に立った一年生の平原啓太と知り合うことになる。国重と沢木が幼なじみだったことを除けば、それまで全く接点のなかった四人は、その日、屋上への愛情が共通しているということから、国重の強引な提案で屋上部を結成することとなった。そして、屋上の平和を守ることを目的とする屋上部は、その目的のせいで様々な事件に巻き込まれることとなる。殺し屋との遭遇であるとか、拳銃騒動であるとか、偽の神様騒動であるとか……。

 いささかあらすじ紹介が長くなったが、この屋上部の面々を中心として、登場人物の存在感が抜群の小説である。それぞれに個性があり、クセがあり、しかもチャーミング。その面々が様々な事件を乗り越えていくのだ(時に決着を先送りすることもある)。実に素敵な青春ミステリである。また、米国大統領拉致事件を含め、様々な要素がそれ以降の伏線として機能している点も見逃せない。こちらもまた魅力的である。

 あえて難点を述べるとすれば、誤字が散見されることか。誤字に出会うたびに興醒めしてしまうのだが、それでも結末まで一気に読ませるこの小説の迫力は、買いである。

(村上貴史)

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