第7回『このミス』大賞 1次通過作品
『GoB』 春畑行成
誘拐事件を題材としたミステリーというと、「身代金受渡し方法の斬新さ」とか「誘拐される対象の奇抜さ」といった、アイディア部分に工夫を凝らしたものが多いですが、この作品は、そんな常道から外れ、視線をずらしてかかれた、なかなかユニークな傑作です。
具体的には身代金の受渡し役を主人公にしている点がポイントです。この手の小説には必要不可欠ながら、あまり重要視されない役回り。とはいえよく考えると、これはどちらのサイドにとっても成否の鍵を握る重要なファクターです。そこに焦点を当て、犯人対被害者という〈黒〉対〈白〉の二項対立図式に、〈第三の視点〉を取り入れ、しかもその役回りを〈グレー〉な人物——強盗傷害の罪で七年の刑期を終えて出所したばかりの男・遠野と、元同房者で自動車窃盗の常習犯・山口——に振った点が面白い。
身代金を工面すべく銀行を襲う羽目になった、人質の父親・吉野。彼は逮捕される寸前に、二人に奪った金と、犯人から送られた動画——監禁された娘を撮影したもの——の入ったメモリを託し、娘を助けて欲しいと懇願します。金を横取りしようという山口に対して、人質を助けると主張して譲らない遠野。二人の身元を突き止めた捜査陣が迫り来る中、対立する二人はどんな行動にでるのか? ひと月前に起きた誘拐殺人事件との関係は? 次々と行き先と到着時間を指定する犯人の狙いは? スピーディーかつサスペンスフルな展開に、一気にクライマックスまで読み進めてしまいました。重いテーマを扱いながら、爽やかな余韻を持ってラストを締めくくる点も、グッドです。
ただし、タイトルは一考の余地あり。”Good or Bad”の略だと思いますが、もう少しわかりやすい方がいいでしょう。
(膳所善造)















