第7回『このミス』大賞 1次通過作品
『毒殺魔の教室』 塔山郁
かつて、六年六組の優等生・楠本大輝が毒殺されるという事件があった。犯人は同じクラスの児童で、三日後に同じ毒を飲んで自殺。それで事件はひとまず決着したはずだったが、事件から三〇年後になって、佐藤と名乗る人物が、被害者と犯人のクラスメートを訪ね歩き始めた……。
関係者のインタヴューや手紙など、読者に断片的な情報を提供していくというスタイルの小説である。この『毒殺魔の教室』は、その情報の出し加減が実に上手い。三章までの佐藤のインタヴューを通じて当時の六年六組が、優秀なクラスという外見通りではなかったことを読者に感じさせ、四章においては“佐藤”の素性についての情報を提供するといった具合に緩急自在なのだ。読者としてはもどかしさを覚えつつも、当時の六組に関する興味を強烈にかき立てられてしまう。そして作者はその読者の興味をいささかも減じさせることなしに、要所要所でしっかりとツイストをはさみつつ、結末へと引っ張っていくのだ。事件の真相が明かされる結末へと。
技巧の面で優れた作品であることはいうまでもないが、テクニックだけの薄っぺらな作品ではない。事件から三〇年を経過した関係者たちの人物描写もしっかりしているのだ。それだけに真相が深く心に響くし、また、エピローグの余韻が味わい深いものとして記憶に残る。読了後の満足感が非常に高い一篇といえよう。
さて、内容は全く別物だが、技巧をかなり前面に出した作品ということで、同じく一次選考通過作の『ストラグル』と重複する側面もある。しかしながら、いずれも甲乙付けがたい出来映えであり、なおかつ両者がそれぞれの独自性を備えているため、両作品を残すこととした。
(村上貴史)















