第7回『このミス』大賞 1次通過作品
『ストラグル』 佐藤菁南
裕司が八歳下の若くて美しい女子社員のあゆみを妻に迎えたのが七年前のこと。可愛い娘も生まれ、課長という職もきちんと務めている彼だったが、悩みがあった。娘が生まれてから、妻と没交渉だったのだ……。
裕司とあゆみの仲を取り持ったのは、あゆみの同僚の瑞樹だった。現在もまだ独身の彼女は、売れない年下の役者に入れあげていた……。 中学二年の淳は、学校でいじめを受けていた。級友から金をせびられ続け、思いあまってひったくりを試みたが、それにも失敗してしまう……。
とまあこうした具合に、上記三人だけでなくその他の男女の悩みも含めて、様々な人間模様が綴られていく小説である。まず、そのそれぞれのエピソードがなかなかに読ませる。エピソード毎に(三人称一視点で)視点人物を変えているのだが、彼等の悩みや思いこみが、実にくっきりと描き出されていて、とにかくページをめくらせるのだ。そして、各エピソードには特に明確なピリオドが打たれることもなく、次のエピソードへと移っていく。その遷移には絶妙なのりしろがあり、相互を巧みにつないでいる。こうした技巧も高く評価したい。
そして最終的に各々のエピソードが組み合わさり、誘拐やら殺人やらというミステリらしい要素も加えながら、この『ストラグル』という小説は一つの大きな絵となる。その構成力も優れているし、さらに、全体としての弾け方も素敵だ。
伊坂幸太郎『ラッシュライフ』などの影響が感じられる群像劇ではあるが、これはこれで立派に独立した作品として愉しめる。二次選考に上げることに躊躇はない。
(村上貴史)















