第7回『このミス』大賞 1次通過作品
『霊眼』 中村啓
ひどい。冒頭があまりにひどい。
もちろん、出来がひどいのではない。この物語、実にイヤな場面から始まるのだ。公開されている冒頭部分を、さっそく読んで確かめていただきたい(ただし、食後すぐは避けたほうが無難です)。
……いかがだろうか? 冒頭のインパクトは、きわめて強烈にして凶悪である。もっとも、幸いなことにこれが延々と続くわけではない。
一ヶ月前に夫の自殺というショッキングな出来事に遭遇した享子は、夫が身を投げる瞬間のフラッシュバックに悩まされていた。ある日、彼女は大学時代からの友人・真弓が失踪したと知らされる。ライターをしていた真弓は、山梨で起きた死体損壊遺棄事件に関心を示し、取材に出かけたまま行方がわからなくなったという。だが、彼女が仕事をしているのはスピリチュアル系の雑誌。いったいなぜ、こんな事件に興味を抱いたのだろう? 真弓の行方を探そうとする享子は、次々と不審な現象に遭遇する。心霊現象を全く信じていなかった享子だったが、やがて幽霊や前世の因縁が渦巻く世界に足を踏み入れることに。そして、霊的な知覚を可能にする「第三の眼」をめぐる企みに巻き込まれていく……。
ところどころに配された、不穏なイメージを喚起する描写が何よりも印象に残る。調査の過程で享子が遭遇する、わずかに不自然な現象。小さな不安を呼び起こす出来事がいくつも重なって、徐々に物語の緊張を高めていく。不安の積み重ねで読む者をじわじわと引き寄せて、その心を緊張の糸で縛りあげる。頂点に達したところに、鮮烈な展開が待っている。ホラー調の展開を巧妙に制御して、読者をぐいぐいと引っぱっていく。このリズムが最後の最後まで続くところが素晴らしい。
オカルティックな要素に現実味を持たせているのも、この生々しさを伴った描写のなせる業である。理屈よりも、皮膚感覚のリアリティで読者を圧倒してみせる作品だ。
(古山裕樹)















