第5回『このミス』大賞 次回作に期待 北原尚彦氏コメント

『バーター』 町井登志夫

北原尚彦コメント

今年は、たまたまわたしのところへ配分されたものがそうだったのかもしれないが、「問題外」な作品が多かった。書き上げたら、もう一度原稿を読み返し、客観的な判断をしてみて頂きたい。また、梗概もきちんと書くようにオススメしておく。梗概がダメなものは、まず間違いなく本文もダメである。

ただし、色々と悩ましい作品はあった。中でも、町井登志夫氏の『バーター』は、2次選考へ通すべきか、最後まで悩んだ。日本が破産し、日本国民は25パーセントという消費税率を回避するため、物々交換「バーター」システムを利用する。かくして市民は貨幣を使わなくなるが、そのシステムを支配するのが中国黒社会だった……という設定は破天荒で非常に面白い。崩壊した日本を舞台にしている、というところでは、氏の第2回小松左京賞受賞作品『今池電波聖ゴミマリア』と同系列に属すると言ってよかろう。だが、その設定の中で繰り返されるドンパチには、途中で少しばかり食傷してしまった。また、法律オタクである主人公も、危難に陥った際になにかその知識を生かした戦いをできればいいのだが、結局は誰かの助けの手が差し伸べられる、というパターンが多いのが残念だった。これはあくまで偶然であるが、前回、今回と町井氏の作品が連続してわたしのもとへと配分された。そして前回、わたしは町井氏の作品を通過させている。通過としなかった今回の作品が前回の作品よりも面白くないかと問われると、実は答えるのは難しい。文章はうまく、しっかりと読ませてくれる。だが、この作品が受賞できるだろうかと考えた際、わたしは「イエス」という答えを出せなかったのだ。2次選考へ下駄を預けることも検討したが、それでは責任放棄になると考え、結論を出した次第である。

それから、誤字・誤変換は前回に比べれば減少したが、まだ多い。誤字を訂正するためだけの推敲を、一度加えてほしい。

町井氏独特の奇想天外な発想と、読者を飽きさせないストーリーテリング、そのバランスの調和された作品で、是非とも応募して頂きたい。

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