第3回『このミス』大賞 1次通過作品

『オセロゲーム』 サワダゴロウ

 オセロゲームでは、白と黒のプレイヤーが交互に盤面に駒をおいていき、相手の駒を挟むとそれがクルリと裏返り、自分の駒になる。このサワダゴロウの『オセロゲーム』では、白と黒のプレイヤーに、例えば青と赤も追加されたような世界が構築されている。

 そのプレイヤーとは、百合江仁という画家の妻である栞、百合江仁に取り入ろうとする画廊経営者(栞の愛人とも噂される)、栞の大学時代の恋人であった達郎、さらに、仁と先妻の子であるカイトなど。こういったプレイヤーが、百合江の館という盤面でプレイするのである――百合江仁殺害というゲームを。

 白と黒との単純な対決の構図ではなく、マルチプレイヤーならではの敵対関係と共犯関係の入り混じった世界を各プレイヤーの視点から描いた本書だが、サワダゴロウは、読者を混乱させることなく鮮やかにその人間関係を描き出している。しかも、それぞれのプレイヤーの思惑を読者に伝えるタイミングが的確であるため、緊張感が失われることは全くなく、むしろ、衝撃と驚愕が次々に読者を襲う効果を生じさせているのだ。また、そうした描写のなかに、きちんと伏線が織り込まれている点も評価したい。そうした丁寧な伏線のおかげで、プレイヤーの一人の意外な胸のうちがラストで明らかにされた際、それが非常に納得できるものとなっているのだ。著者のバランス感覚とミステリセンスのなせる技であろう。

 応募作のなかでは、比較的短めの部類に入るであろうこの『オセロゲーム』だが、クオリティは図抜けている。冗漫なところが一切なく、必要な要素のみで密度高く構成されているのだ。不純物ゼロのミステリのみが持ちうる煌めきを、是非とも多くの人に鑑賞してもらいたいものである。

(村上貴史)

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