第3回『このミス』大賞
第3回『このミス』大賞受賞作
『果てしなき渇き』深町秋生
私 の青春は暗かった。『果てしなき渇き』では、そんな過去を嫌々思い出しながら書いた。これは孤独と憎悪に耐えかね、疾走する人間達の悲しみを描いた作品で ある。友愛や和気を著しく欠いているために、激しい拒否感を抱く方もいるだろう。けれど同時にこの小説の世界に共感を覚える方もきっとどこかにいてくれる はずだとも思う。なぜなら慈愛に満ちた世界を疎み、燦々と輝く太陽に向かって唾を吐きたいと願う人間は、私だけではないはずだと、固く信じているからだ。
※大賞受賞時のタイトルは『果てなき渇きに眼を覚まし』。著者名は古川敦史(ふるかわあつし)
第3回『このミス』大賞受賞作
『サウスポー・キラー』水原秀策
「ミステリ」と名のつく賞をいただいておいて、今さら言いにくいのですが私の小説にはいわゆるトリック(密室や時刻表など)は存在していません。多重人格 者や猟奇的な殺人者も出てきません。それどころか死体すらありません。実はキリストが妻帯していたなんていう魅力的な謎をめぐる話でもなく、世界の中心で 愛もさけばない、のろわれたビデオもない―そんなミステリです。