第3回『このミス』大賞 1次通過作品

『ハッピープレイス』 満賀ミチヲ

 まずペンネームを見て呆れましたね。満賀ミチヲって、藤子A不二雄の『まんが道』かよ! デビューできたとして、その名前で作家活動する気かよ。直木賞絶対ムリ! ……などと、非常に否定的な印象を抱いて読み始めたのである。まあ、無理もないよね。

 中身は案の定。登場人物はいくつかの陣営に分かれていて、そのうちの一つがヤンキー集団。リーダーの翔が「FとAがそろってこそ、はじっめてホンットーの藤子不二雄なんだよ」が信条の藤子プロおたく、というのは予想通りながら、『劇画・オバQ』を読んで感動したためにチーム名を「門蘇汰亜Q矜愚唾無」に改めたというのには笑った。「モンスターQキングダム」って読むんだって。翔以外のメンバーも初登場場面が「インリン・オブ・ジョイトイのビキニパンツの布はいったいどこまで小さくなんだよ」と考えているやつだったり、電車の中で老人と乱闘して負けそうになるやつだったり。その乱闘場面がまたばかばかしくて、ヤンキーたちはトルエンでラリっているため動きが『マトリックス』のSFX並みにスローモーなのだ。あはは、よくこんなこと考えつくわ。ちなみに乱闘の相手である間宮信が属するのが、健康センターのカラオケボックスにたむろする老人グループ。間宮老人は予科練出身で、バリバリの戦中派だ。ヤンキーとカラオケ老人グループが一体どう絡むのか。そこに関心を持つと小説に引き込まれる。

 とにかく笑わせてやろうという意欲に満ちた作品だ。小説としてはお世辞にも上手とはいえない。きっと私、2次以降の選考委員に怒られるだろうな、という気もする。しかし、まずは騙されたと思って読んでみてくださいよ。減点法で採点する一般の新人賞ではなく、『このミス』大賞だからこそこの小説に授賞する価値はある、と確信する。すごい潜在力、すごいユーモアセンス、そしてすごいサービス精神である。この人は、きっと化けるよ。

(杉江松恋)

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