第1回『このミス』大賞 受賞作

『四日間の奇蹟』浅倉卓弥

浅倉卓弥プロフィール

1966年、札幌生まれ。
東京大学文学部卒業後、某大手レコード会社に入社、洋楽部にてディレクター他を勤める。退社後小説家を志すが、最初の作品を完成するまで実に3年を越す時間を要し、瞬く間に20代が終わってしまう。しかも1500枚を越す作品を応募できる媒体のあるはずもなく、30の冬は途方に暮れていた。もっともこの小説は、まだ人に読んでもらえるレベルではない。だがこれを仕上げたことで、諦めることができなくなった。その間もその後も周囲に多大な迷惑をかけつつ、翻訳会社や雑誌編集部などで 主にアルバイト扱いでの勤務を続けて日々を凌ぎ、小説を書いてきた。現在は団体職員。


受賞コメント

嬉しい、というよりほかに言葉が出て来ません。

おそらくこれほど感極まることは、この先そう簡単にはないだろう。そんな想像に一抹の淋しさを覚えるほど、今は喜びで一杯です。

選考に携わり、この切符を僕に与えて下さった委員の皆様、事務局の皆様、冒頭のみにも係わらず好意的なコメントを寄せてくれた方々、そして誰よりも、これまでの僕を支えてくれた友人と家族とに、まず声を大にして感謝を伝えたく思います。

本当にありがとうございました。

御指摘にもあった通り『四日間の奇蹟』は素直にミステリーとは呼び難い種類の作品です。その意味で本賞への応募も、半信半疑のままでのものでした。ただ、実を言えば、過去自分なりに仕上げた他の作品は、さらにこのジャンルとはかけ離れています。果たして自分の書いているものがどこへ向かっているのか。振り返れば、それを見失っていた時期が一番辛かった気がします。

今ようやく、どの物語も、その底にたたえているものは同じはずだと言えそうに思えています。今回の受賞がその勇気を与えてくれました。

書くことは恐ろしく時間がかかります。けれど読むという行為もやはり、時間と力とを要するものだと思います。叶うならば、この先出会う誰かが僕の文章に費やしてくれる時間が、せめて悪くないものであってほしい。そう願って書いてきましたし、これからもこの気持ちは忘れたくないと感じます。

さて、何といっても、あの『このミステリーがすごい!』の名を冠した新人賞の、しかも第1回目の受賞です。プレッシャーはかなりきつく、かなりシビアです。でもそんな感覚も、今夜はひどく心地好く回ります。

―さあ、これからだ。

これからも、浅倉をよろしくお願いいたします。
2002/9/29 深夜