第24回『このミス』大賞 1次通過作品 人間は生きてる限りアイを知る
不老不死の少女は旅に出る
悠久の時をいかに生きるかを知るために
少女が訪れた四つの場所で不可解な事件の謎を解く特殊設定ミステリ
『人間は生きてる限りアイを知る』悠木允
不老不死の身となってしまった少女シオンが、どう生きればよいのかを知るために自分と似た境遇の存在と接触すべく旅に出て、不死の者が集う四つの場所を訪れ、そこで巻き込まれた不可解な死の謎を解決する中で成長していく異世界特殊設定ミステリです。
地縛霊となったゴーストたちが、サーバントと呼ばれる人間に奉仕させて優雅に暮らす豪奢な巨大ホテルで起きた密室殺人。千年の間、王の復活を望む大勢の骸骨兵が暮らす王国で、目覚めた当日に密室内で王が刺殺された不可能犯罪。不老不死になる方法を探求する宗教団体内で発生した不死者候補者の死を巡る謎。そして、不老不死の者ばかりが暮らす社会から隔絶された最果ての地で続発する不死者身体盗難事件。長い月日の間にシオンが遭遇する四つの事件は緩やかに連関し、練度の高い謎解きミステリに仕上がっています。と同時に、不老不死の主人公が事件の真相解明を担うことで永久に生きることの意味を追究し、いかに生きるかを模索する成長小説でもある点が独創的です。
舞台をアメリカ合衆国が誕生しなかった世界線の新大陸とし、各地に不死の者が存在する社会がどのように機能しているのか、どんな社会的・倫理的影響を及ぼしているのかを深く考慮した上で物語を展開しているので、特殊な設定に違和感を感じることなく作品世界に没入できます。四つの事件を通じて生きることの意味という普遍的なテーマを追究する奥深いエンターテインメントです。
(川出正樹)















