第24回『このミス』大賞 1次通過作品 馬と亀

熱意溢れる新米女性刑事と厭世的なベテラン悪徳刑事
対照的な二人の捜査官の軌跡がクライマックスで劇的に交叉する
読後感爽快な警察捜査小説

『馬と亀』波北明道

 盗犯係の熱意溢れる新米女性刑事・馬場みどりと組織対策係の厭世的な悪徳刑事・亀井忠之。年齢、性別、性格、信条、職務態度、そして私生活とすべてにおいて対照的な二人を主人公に、それぞれの捜査活動の過程を交互に描いていき、クライマックスで二つの軌跡を交叉させて一気にラストへと収斂させる警察捜査小説です。
 ゲームセンターで起きた盗難事件を捜査するかたわら、連続車上荒らしの容疑で未成年の女性二人を逮捕する馬場。弱みを握られている男からの指示に従い、違法風俗店に対するガサ入れの情報を漏らし運営者を逃がした亀井。車上荒らしを強要していた半グレ集団がガサ入れの現場にいた三人の大学生と同じ者たちであると知った亀井は、火の粉が及ばないように彼らを隠匿する羽目に陥る。
 全力で捜査に当たる中で刑事として成長していく馬場と、ある出遭いを機にまっとうな刑事に戻ろうと策を巡らす亀井という対照的な二人の行動を、臨場感のある文章でテンポ良く語っていく手際が見事です。加えて、同じ警察署に勤務しながら所属班が異なるために、二人がなかなか直接顔を合わせないという構成に唸りました。序盤で二人を出会わせ、馬場が亀井に対して徐々に疑惑を募らせていく、というありがちな展開としない点にセンスの良さを感じます。二本の主筋と複数の脇筋を一点に収斂させる切れ味の良いクライマックスも胸がすきます。あと、一見素っ気なく見えて実はユーモラスで音感も良いタイトルの付け方もいいですね。主役二人を始めとする一面的でないキャラクター造形力も高ポイントで、自信を持って一時通過作として推します。

(川出正樹)

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