第23回『このミス』大賞 1次通過作品 sustainable woman
鮫乱獲の背後にある大がかりな陰謀
探偵にしてK1女子チャンピオンでもある主人公の
海と陸にまたがる活躍を軽妙に描いた私立探偵小説
『sustainable woman』渋谷想
探偵にして総合格闘技(K1)の女子ミニマム級チャンピオンでもある相川梨花が、大手化粧品会社と鳥取県漁業組合の依頼を受けて、準絶滅危惧種である鮫の乱獲者を突き止めるべく調査を進める中で、殺人事件の謎を解明し、背後にある大がかりな陰謀を暴く躍動感溢れる活劇私立探偵小説です。
高級食材フカヒレの原料である鮫の鰭だけを切り取って、残った体を海に捨てるフィニングという国際的に残酷な行為とされる漁法に目を付けた点に作者のセンスを感じました。SDGsを重視する化粧品会社が漁協と組んで調査を依頼するという一風変わった設定に信憑性を持たせ、読者を物語世界にすんなりと入らせることができているからです。
梨花を単純な正義の履行者とせずに、簡単に善と悪とに割り切ることが出来ない現在の複雑な社会問題と対峙させて、彼女に考え決断させることで人間的な成長を描いている点も好感を持ちました。乱獲者との海上での対決場面を始め、軽妙なアクション小説としての面白さを備えている点も評価ポイント。欲を言えばK1チャンピオンという設定がフルで発揮される梨花の活劇シーンをもう少し多く読みたかったです。鮫乱獲の背後にある陰謀の真相も納得性が有り、一次通過の水準に達していると思います。
(川出正樹)