第23回『このミス』大賞 1次通過作品 RION
最強無敵PK女子高生vs.警察
切なさ爆発のサイキックバトル
『RION』長瀬遼
外傷はないのに内臓や脳だけが壊滅的な被害を受けて死亡するという摩訶不思議な連続殺人事件が起きた。担当した刑事はその死に方に、昔起きた一家惨殺事件を思い出す。その事件には生き残りの少女がいたのだが──。
不可思議な事件の背後にサイコキネシス使いの女子高生がいたという、一歩間違えれば何でもありになってしまう設定なのだが、ヒロインが暴走する理由がしっかりと描き込まれ、ドラマ性がとても高い。何よりヒロイン自身がまだ若くて不安定なことと能力の強さのアンバランスが本作の魅力だ。最強のパワーを持った能力者の暴走の動機が初恋のお兄さんの敵討ってのがエモいじゃないか。
そんな劇画的な部分を、警察捜査部分のリアルな描き込みが補完している。筆力・構成力とも高く、安定しているのも強み。人物も細部に至るまでしっかり描き込まれていて、このままドラマにできそうなほど映像的なサスペンスになっている。読んでいて映像が浮かぶ場面が実に多かった。
ただ、警察小説の描き方として(PKという要素はあるにしろ)新味がやや薄い感はある。
(大矢博子)