第22回『このミス』大賞 1次通過作品 悪魔のDスナイパー

家族を失くしたウクライナ少年が
得意のドローン操作を駆使して戦う
いま正に旬なテーマの復讐劇

『悪魔のD(ドローン)スナイパー』瀬野純

 主人公、アンドリー・ポクラサはロシア国境近くに住んでいるウクライナ人で、ドローンの操作が大好きな少年(15歳)だった。2022年2月24日、ロシアがウクライナへの侵攻を始めた際、父に命じられてドローンを駆使し、ウクライナの部隊に協力する。ロシアの戦車部隊の撃破に尽力した一方で、アンドリーはロシア兵のために家族を失うことになった。
 アンドリーは復讐を誓うが、年齢的にウクライナ軍には入れない。正規の軍隊ではない、ドローンを使った後方支援部隊に参加させてもらい、戦闘を通して技術と知識を向上させていく。やがて彼は、十五歳でも前線へ出られる「秘策」を思いつき、実践する……。
 正に「今の世界情勢」を背景に、「ロシアのウクライナ侵攻」に「ドローン」と、新鮮(タイムリー)なネタを描いた作品だ。その分、センシティヴな側面も発生しかねないが、そこは大丈夫だろう。タイトルは、旬なテーマを扱っていることをもっと分かり易く押し出したものにした方がいいかもしれない。
 全体に読みやすく書かれているものの、オノマトペ(擬音表現)やセリフ回しをもう少し(洗練、とまでは言わないが)こなれさせた方が読者も入り込み易いと思う。
 地の文の「説明」部分がやや多目かなという気がするが、「過多」とまでは言えないので大丈夫だろう。地理や技術については、しっかりと調べてストーリーに反映させているところは好感が持てる。
 しかし過去のシーン(フラッシュバック)の挟み方については、現在進行形の話と紛らわしかったりするので、もう一工夫あって欲しい。
「生きのよさ」は間違いないので、(改稿は必要だとは思うが)二次選考へ進むべき作品と判断した。

(北原尚彦)

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