第22回『このミス』大賞 1次通過作品 殿塚に呪いをかけないか
小学生のときの呪いが、七年後に動き出す
ひとりずつ殺されていく「呪った仲間たち」、次に狙われるのは誰だ
『殿塚に呪いをかけないか』木元哉多
クラスの乱暴者が許せなくて、同じ団地に住む小学校五年の幼馴染七人は彼が死ぬよう呪いをかけることにした。ところが翌々日、本当にそのクラスメートが死んでしまう。呪いを言い出した優馬は錯乱し、落ち込み、団地の屋上から転落死した。
それから七年後。当時呪いに参加したひとりである春彦はその後すぐに引っ越して、大学生になった。その大学で、同じ仲間だった高志と再会。そしてそこから当時のメンバーが一人ずつ死んでいく。呪いは本当にあったのか──?
事故死としか思えない状況で関係者が次々と死んでいくスリル、身の危険を感じた春彦がとった行動など、ミステリとしてもサスペンスとしても吸引力が強くてぐいぐい読まされた。同じ団地で育った七人が十八歳になってそれぞれ異なる進路に進み、その価値観や生活の違いなどは青春小説としても読み応えがある。特に一美と竜星がいい。一美は「こういう人、いる」というリアリティが、竜星はその異常性が、ともに強い印象を残した。物語の展開も人物造形も、とても完成度が高い。
ただ、真犯人のモノローグで真相がすべて説明されるのは盛り上がりに水を差す。細かい部分は本人に語らせるしかないにせよ、真相を見抜いて真犯人にそれをつきつける人物との会話の中で明らかにしていくこともできたのでは。その方が真犯人の動機の異常性についても客観的に描写できるだろう。また、真犯人の心理や行動に後出し感が強い。そのあとに用意されたどんでん返しが面白いだけに、伏線と真相解明場面を再考すればいっそう面白いものになると期待している。
(大矢博子)