第19回『このミス』大賞1次通過作品 甘美なる作戦

ヤクザ稼業はトラブル稼業。
組員未満の二人に、無理難題が押し寄せる。
宗教団体の利権を狙った犯行の結末は……?

『甘美なる作戦』呉座紀一

 暴力団の見習い組員が、ハイリスクな難題を抱えて奔走する物語だ。
 真二は暴力団の組員未満、いわばインターン。相棒の悠人とともに、表の芸能プロダクションで働きながら、若頭・荒木田に命じられて、企業の恐喝などの使い走りをする日々だ。そんなある日、真二と悠人は荒木田の旧知の高利貸しを訪ねるが、彼は何者かに殺されていた。
 一方、植草と娘の菜々美が営む自動車部品店は地上げのトラブルを抱えていた。さらに手形を騙し取られ、店は窮地に陥る。
 そのころ真二は荒木田に命じられて、神奈川県のある町に行く。ここに本拠地を構える宗教団体のバックには他の暴力団がついていて、宗教法人という隠れ蓑を利用して利権を拡大していた。その利権を狙って、荒木田は真二と悠人にある計画の立案を命じた……。
 新興宗教を狙う犯罪を軸に、高利貸し殺しや地上げなど複数の事件が絡み合い、意外な結末へと着地する。ある事件の「その後」が忘れた頃に顔を出し、あるいは伏線として作用して、あっと言わせる効果を及ぼす。
 全編にほんのり滲み出るユーモアも忘れがたい。笑いに振り切った作品ではないけれど、軽妙な語りに、あるいは人物描写の端々にニヤリとさせられ、愉快な余韻を残す。
 後半の一部の叙述に、ミステリとしてはアンフェアな部分もあるけれど、多少の手直しで解消できる範囲のものだと考える。

(古山裕樹)

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