第10回『このミス』大賞 1次通過作品
女性教師の惨殺死体を描いた油絵を飾ったのは誰?
養護教諭と美術教師が、動機を巡って賭けをした!
風変わりな犯人探しを綴った学園ミステリー
『殺人画家は 私です』 篠原昌裕
一流進学校になりつつある私立高校・山瀬学園でトラブルが発生した。女性教師の惨殺死体の油絵が廊下に飾られたのだ。校長に犯人探しを命じられた養護教諭の茂木遥は、サポート役の美術教師・椎名巧と犯人の動機について賭けをする。自分の想像が正しければ椎名が学校を辞める、逆であればヌードモデルになる――という条件のもとで調査を始めた茂木は、やがて意外な人物に辿り着くのだった。
いわゆる“日常の謎”を扱った学園ミステリーである。重大な犯罪は起きないものの、殺人画を「素晴らしい」と評してセクハラ発言を繰り返す椎名と、それを不愉快に感じる茂木のちぐはぐなコンビが推進力になっている。嫌味な皮肉屋として登場する椎名が、本当はどんな人間なのかを茂木が悟るまでの過程――すなわち椎名のキャラクター性こそが本作の大黒柱なのだ。その周囲に波紋のように配されるのが、ひとつの騒動を起点として生じる教師や学生たちの反応。さほど派手な展開は無いにせよ、ここには学校という閉じた社会の冷淡さが示されている。
とはいえ不満点もいくつかある。情報や仮説や伏線といった“ミステリのパーツ”が少なく、事件の規模が小さいことも相まって、物語がやや冗長な感は否めない。動機の説明が唐突に映るのも構成上の問題だろう。そして最大のウイークポイントは、エピローグの趣向が容易に予想される(むしろ無いほうが不自然)レベルに留まっていることだ。しかしそんな欠点を抱えてもなお、事件のユニークさと主役コンビの愛すべきパーソナリティには見るべきものがある。土台の部分は悪くないだけに、いささかの改稿を前提として二次選考に残しておきたい。
(福井健太)















