第10回『このミス』大賞 1次通過作品

名古屋の商店街で宇宙人が爆発!
主人公は、特殊能力を与えてしまう宇宙人のかけらを集め、
混乱する名古屋を救うことができるのか!?

『微妙都市』 三木了

 先輩にギターを渡すため、名古屋の円頓寺商店街を目指す大学生――仲田と石原の目の前で、突然、不審な男が手にした蜜柑をかじるや、光を発して爆発した! 飛び散った破片は、ひとを含めたさまざまなものに“微妙”な能力を与え、名古屋の街は大混乱に陥ってしまう。破片の影響で、謎の金色の拳銃を手に入れた仲田と、珈琲を見つめると瞬間移動できるようになった石原は、いつの間にか先輩に渡すギターが消えていることに気付く。いっぽう、看護師の杏の心には、爆発して飛び散った張本人――“棗”と名乗る宇宙人の精神が侵入。破片探査能力を持つ自分の弟をはじめ、異能の人間たちを引き寄せながら、破片探しに奔走する。だが、その間にも混乱が加速する名古屋……。果たして異能の者たちは、“棗”の破片をすべて回収し、名古屋を救うことができるのか? ところが、そんな彼らの前に立ち塞がったのは、なんと街中の物を自在に操る、あの先輩に渡すはずの消えたギターだった――!
 都会とも田舎ともいい切れない、つかみどころのない“微妙”な都市――名古屋を舞台に繰り広げられる、“微妙”な異能者たちの空想パニック群像劇。あらすじだけだと、相当ハチャメチャで、とっ散らかった印象を覚えるかもしれないが、これがさにあらず。地の文がしっかりしているので、破天荒な情景や展開を重ねてもテンポと牽引力を損なわないし、進行とともに混乱のスケールを拡大させつつ複数のエピソードを束ねていく手腕もなかなかのもの。破片を浴びた人間の能力のバリエーションも面白く、仲田の金色の拳銃と石原の瞬間移動のほかにも、若返りと老化促進、人面犬と犬面人の入れ替わり、身体からLSD分泌、12時間ごとに自分を複製、手鏡を使って並行世界を行き来などなど――
しかもそれぞれにちゃんとドラマが用意されている点もポイント高し。ニヤニヤしながら、名古屋の同業者に読ませてみたいと、強く思ってしまった快作である。

(宇田川拓也)

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