第10回『このミス』大賞 1次通過作品
とある私有地の古墳内で
自転車にまたがった死体が発見された!
大学助教が女装癖のある教授とともに事件を追う
『ユークリッド焼きそばの漆黒』 在神英資
語り手となるのは、大阪の大学で助教をしている路川(34歳)。上司であるユウキ教授は、女性の格好をしていて見た目も女性そのものだが、男性(43歳)である。研究室に、ユウキ教授の妹、時雨(18歳)が現われ、彼女の元恋人(遠い親戚でもある)が失踪したので探して欲しいという。路川はそれに巻き込まれる。
ある時、路川の自転車が盗まれた。警察が見つけてはくれたが、それには理由があった。とある私有地にある古墳の中で死体が発見されたのだが、その死体は路川の自転車にまたがった姿だったのである。
死体も古墳も、東漢(やまとのあや)の一族が関係していることが判明。幾つもの事件が、ユウキ教授の調査のもと、ひとつにまとまっていく……
古墳の中で「自転車に乗った死体」が発見される、というシチュエーションは、実に魅力的だ。なぜ古墳の中なのか、なぜそんな格好なのか、それを知りたくて読者は最後まで読み続けてしまう。
ユウキ教授は、キャラクター立ちまくり。なにせ最初は加賀友禅を仕立て直したミニスカ着物に高ぽっくり、それからも中国の少数民族・長角苗族の民族衣装や、白衣に緋袴の巫女姿などで現われるのだ。ただ少々エキセントリックすぎて最初はちょっとめげそうになったが、読み進めるうちに気にならなくなった。
ユウキ教授に振り回される路川、という構図がユーモラス。また全体にわたって頻出する関西弁もテンポを良くしている。ときどきセリフと地の文の順番が悪いなど、バランスに欠ける文章が見られたが、その点は簡単に直せるだろう。
全体として目指しているところは、なかなか『このミス』大賞向けだ。これまでに2回、「次回作に期待」に入っているだけに、傾向と対策を研究しているようだ。以上を勘案して、一次通過とした。
(北原尚彦)















