第10回『このミス』大賞 1次通過作品
《生ける屍》が跋扈する地を舞台に生きる人々の熱情と苦悩。
様々なジャンル――ホラー、SF、ノワール、活劇、本格ミステリー――
それぞれのエッセンスを詰め込んだ娯楽作品
『世界の終わり』 黒木隆志
このところ世界のあちこちで《生ける屍》が蠢き始めている。映画にアニメに漫画にゲーム、そしてもちろん小説。あらゆる娯楽メディアでクリエイターが愛情と狂熱を注ぎ込んだ〈死者たちの宴〉が日夜繰り広げられ、その勢いは止まるところを知らない。
そう、“死者が蘇る”というアイディアは、今や数ある定番設定のひとつに昇格した。そこからいかに世界を構築するか、その世界ならではの物語を創造するかが腕の見せ所だ。
この作品『世界の終わり』は、そんな高いハードルに挑みクリアしたクロスオーバー・エンターテインメントだ。その題名の平凡さとは裏腹に、いくつもの趣向を凝らし様々なジャンル――ホラー、SF、ノワール、活劇、そしてなんと本格ミステリ! ――のエッセンスを詰め込んだ娯楽作品である。昨年話題となったマックス・ブルックス『WORLD WAR Z』にちょっと似ていると言ったら、誉めすぎかな。
謎の研究施設から漏れ出たウィルスにより生ける屍《グール》が徘徊するようになった九州が封鎖されて早7年。軍と警察、そしてわずかな復興支援団体のみが活動を許される地に、3人の若者が無断上陸するところから物語は始まる。彼らの目的は空き家となったコレクターの住居に侵入してお宝フィギュアを収拾してくること。だが無人のはずの屋敷には縛られ吊り下げられた《グール》が!
このつかみ充分なエピソードに続き、密室状態の動物園跡地で人間と《グール》の双方から2度にわたって殺された男の謎を解く本格ミステリ、《生ける屍》を利用したビジネスにたずさわる男の暗き情念を意識の流れに沿って活写したノワール、事件を未然に防ぐことを目指す名探偵の葛藤、廃墟ホテルでの活劇といった具合に《生ける屍》が跋扈する地を舞台に生きる人々の熱情と懊悩が語られていく。そして、最終的にはこれらのエピソードが連関しひとつの大きな絵を浮かびあがらせた後、静かに収束していくのだ。やや詰め込み過ぎな点や一部未消化なエピソードがあるものの、そのオリジナリティと物語る力は本物だ。自信を持って一次通過作品として推します。
(膳所善造)















