第9回『このミス』大賞 1次通過作品 19

あの忍者の子孫が宇宙の麻薬捜査官に!?
アメリカを舞台に、宇宙規模の巨大な陰謀が描かれる
二十世紀空想科学忍者活劇。

『アンドロメダからきた忍者〈新大統領はジョン・F・ケネディ・ジュニア〉』 守屋雅

 正直タイトルを見た瞬間、「おいおい」と苦笑いしてしまった。が、実際に読んでみると、これがそうも侮れない作りで、『007は二度死ぬ』的な愉しさにニヤニヤしているうちにするすると読了してしまった。
 織田信長の伊賀の乱から始まる、ふたりの忍者の宿命の対決――なのだが、時代小説調の文章はたちまちカタカナに浸食され、空想科学忍者活劇(極めて二十世紀的な)として走り出す。戦の最中、服部半蔵はアンドロメダ・オレンジ星の円盤に助けられ、いっぽう武田勝頼を襲うも傷を負った風間小太郎はアンドロメダ・ブルー星の円盤に助けられる。こうして対立するふたつの星の住人となった彼らだが、時は流れ、ふたりの子孫は、いまや先祖伝来の忍術を活かして宇宙連合の麻薬捜査官(!?)として活躍。宇宙には地球の麻薬が蔓延し始めており(コカインやヘロインは地球でしか作れないのだ!)、麻薬の密輸出ルート破壊のため地球に派遣された半蔵は捜査を進めるが、小太郎がブルー星大統領の密命を受けて、逆に密輸出を促進させたことから双方は対立。アメリカを舞台に熾烈な忍術合戦を繰り広げるなか、徐々に宇宙と地球をめぐる巨大な陰謀が明らかになっていく――。
 ねちねちと愚痴をこぼし始めたら、切りがない作品なのは確かに認める。だが、そうすることを思わず忘れさせてしまう瞬間があるのも事実である。とにかく手当たり次第に面白そうなものをぶち込むも、混ぜ合わせ方だけは軽視しない御歳75歳の奔放さに敬意を表するとともに、オトナぶった顔で読者を忘れた作品が多いなか、ひたすらに読み手を愉しませようと高い意識を忘れなかった稚気を、私は評価したい。

(宇田川拓也)

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