第9回『このミス』大賞 1次通過作品 18

監禁暴行という壮絶な過去を抱える女と、
過去を克服し、前向きに生きる女。そんなふたりの周辺で
相次ぐ不審死が、10年前の悪夢を呼び起こす!

『ハナカマキリの変容』 美輪宙

 不破真尋は10年前、16歳の時に『ネロ』という男に廃ビルに監禁され、暴行を受けた。ネロは捕まって刑務所入りとなったが、10年を経た現在でも真尋の精神的な傷は癒えていなかった。
 そんな彼女は、矢向いづみと知り合った。いづみもまた、似たような過去を持つ女性だったが、過去を乗り越えて積極的な人生を送っていた。真尋は、そんないづみに惹かれるようになる。
 そんな頃ネロの本名を名乗る男から何度も電話がかかるようになった。ネロがもう出所したのかもしれない。真尋は怯えた。それを知ったいづみが、真尋の家に泊まりこんでくれることになった。
 そして遂に、真尋の家に一人の男が侵入してきた。真尋は、その男を刺してしまう。だが転がっている死体を確認すると、それはネロではなかった。真尋は思い込みで、他人を刺してしまったのだ。いづみは真尋のために、死体を処分すると言う。翌日には、死体は家から運び去られていた。
 しかし数日後、死んだ男を捜して亜子という女性が現われた。彼女は、いづみのことも知っている様子だった。
また、真尋の母は脳出血で倒れたものの快方に向かっていたのだが、容態が急変して死んでしまう。そして、彼女が5000万円もの生命保険に加入していたことが発覚する。真尋には心当たりがない。一体、真尋の周りで何が起こっているのだろうか……。
 よどみなく展開されるストーリーが読者を飽きさせないサスペンス。作者は別ジャンルにおいて別名義で既に活躍されている方とのことだが、確かな実力が感じられた。
 ただ、文章が途中で切れている箇所があったのは残念。推敲などの際のミスと思われるが、読み返していれば気づくはず。原稿をプリントアウトしたら、必ず一度は読み返すべし。時間がなければ、手書きで直せばいいことです。
また、とある登場人物の名前が明かされるよりも前に、地の文でいきなりその名前が出てきてしまって「?」となる部分が、2カ所あった。これもケアレスミスながらも、やや減点。
 以上の2点があるものの、本作は2次選考へと進む十二分な実力あり。

(北原尚彦)

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