第9回『このミス』大賞 1次通過作品 14

凄惨な殺人を繰り返す巨人「モンスター」。
犠牲者たちの隠されたつながりとは?
地道な警察の捜査vs.殺人鬼モンスター

『モンスター』 春畑行成

 冒頭のインパクトが強烈な作品だ。
 まずは、一室に閉じこめられて、半ば野獣のように暮らす怪物じみた男と、その世話をする老人の様子が語られる。
まもなく場面は変わって、最終電車に乗った会社員が、窓の外に不気味な姿を目撃する。2メートルを超える大男が、片手に鉈を、片手に人間の首をぶら下げていたのだ。そして翌朝、首を切断された死体が発見される。現場付近には、35センチの巨大な足跡が残されていた……。
 物語は、凄惨な殺人を重ねる「モンスター」を追う刑事たちの視点を中心に語られる。
 捜査を通じて浮かび上がる、犠牲者たちの過去のつながり。そして、「モンスター」──不気味な大男の異様な出自も徐々に明かされる。
地を這うように小さな事実を積み重ねて、真相へと迫っていく。地道な捜査の過程を、手堅く描いている。
 その地道な捜査と好対照をなすのが、ところどころに描かれる「モンスター」の登場する場面だ。常人を圧倒する身体能力がもたらす壮絶な光景を、怪物めいた迫力で読ませる。
警察側のキャラクターが地味ではあるけれど、丁寧に描かれた捜査の過程と、過酷な環境で育った「モンスター」の凄まじさが織りなす、静と動のバランスを評価したい。

(古山裕樹)

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