第9回『このミス』大賞 1次通過作品 13

東京に現れた、赤い月と“鬼”たち――。
日本を裏側から護ってきたある一族と
“鬼”の壮絶な戦いを描く伝奇アクション!

『風土鬼』 永井幸世

 基礎的な力は充分に備えている方だと思う。文章もかなり書き慣れた感があって安心して読めるし、話の転がし方も心得ていて飽きさせない。私が今回読んだ応募作のなかでは、もっとも総合的にバランスの取れた作品といえる。プロローグで日本を裏側から護ってきた一族の起源に触れ、東京に跳梁跋扈し始めた鬼たちを追う展開へとつなぎ、平安のときと現代を結びつつ不穏な空気を濃くしていくあたりもいいし、天狗や夜叉を巻き込んでの巨大鬼との決戦に向けた盛り上げ方もなかなか堂に入ったものである。ただし、決して欠点がないわけではない。日本神話の要素を用いて妖怪や化けものたちとの死闘を描く――といったところで、いまさらそこに日本型エンターテインメントとしての斬新さを見出すのは正直難しい。夢枕獏、『孔雀王』、『妖怪大戦争』etc……所々まとわり付く既視感がどうにもこうにも気になってしまうし、また“総合的にバランスの取れた”ということは、いい換えれば、抜きん出たものが見えてこないということでもある。昨年、『トギオ』のような作品に授賞する本賞では、これは不利といわざるを得ない。とはいえ、この作りの良さにわざわざケチをつけるというのもヘンな話であり、そこは正当に評価すべきと考え、2次選考に上げる次第である。

(宇田川拓也)

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