第9回『このミス』大賞 1次通過作品 04

大物政治家の秘密が記された告発文書をめぐって
義賊集団と政界の黒幕との争奪戦がはじまる。
罠に満ちた闘いに勝ち抜くのはどちらか!

『罠師参上』 岡辰郎

 時代は1980年代。“事故死”した議員秘書が残した告発文書。そこには、首相を務めたこともある大物政治家・中田の、決して明かされてはならない秘密が記されていた。文書を手に入れた衆議院議員・坂川は、何者かに脅迫される。だが、彼はその場で心臓発作を起こして命を落とし、書類の所在は分からなくなってしまった……。
不穏な告発文書をめぐって、罠だらけの争奪戦が繰り広げられる。
対決するのは二つの陣営。一方は、政界の黒幕──といっても、政治家ではない。表向きは中堅不動産会社の経営者として、密かに政治家の参謀役を務める策士・若林。世間に知られることなく、政治家を通じて日本をコントロールしようと企んでいる。
 もう一方は、「罠師」と呼ばれる、数百年前から綿々と続く犯罪者集団(自らは義賊と称している)。その頭目・大熊宗八のもとに、坂川殺しの濡れ衣を着せられた検察官が転がり込んだところから、罠と策略のゲームが始まる。
 どこにも怪しいところがないのは、罠である証拠。物事が上手く進んでいるのは、相手の策略。罠を成功に導くためには、味方をも欺く。そんなふうに疑心暗鬼が渦を巻く、策略と策略の密かなぶつかり合いを中心に据えた物語である。
 そして、謀略ものには一見場違いな、罠師一族のキャラクターもこの作品の魅力を引き立てている。
頭目の宗八は、下町育ちの偏屈親父。酒好きで短気でおっちょこちょい。出来心でイスラエルの秘宝と言われるダイヤモンドを盗み出したせいで、モサドに付け狙われてしまうようなお調子者だ。その娘で宗八の右腕となる竜子も、容姿とは正反対の激烈な性格が忘れがたい。
 やや強引ながらも二重三重の仕掛けに満ちたストーリーと、登場人物の造形で読ませる物語だ。

(古山裕樹)

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