第9回『このミス』大賞 1次通過作品
自殺の「伝染」を食い止めろ!
自殺を促す者と止める者のサスペンス。
連鎖する自殺は、見たことのない風景を描きだす
『囁き』 佐鹿史郎
今や日本人の死因としてポピュラーなものになってしまった自殺。それをテーマにしたのがこの作品だ。
女子高生の雪耶は、両親が殺人事件の被害者になったトラウマから、自殺未遂を起こしたことがある。今では、自殺サイトに書き込まれた予告を見つけては、人々の自殺を未然に止める日々を過ごしていた。
そんな彼女が、ある駅で自殺を止めたのをきっかけに、南波という男と出会う。「自殺防疫研究所」に勤める南波は、自殺は感染するのだと雪耶に説く。報道や噂話を通じて、人々は自殺衝動を膨らませて、次々と自殺に走ってしまう。その群発自殺を食い止めるのが、南波の仕事だ。二人は互いに惹かれ合う。だが、二人の過去がある一点で交錯していたことには気づいていなかった……。
いっぽう、警視庁捜査一課の片瀬は、2件の自殺現場で、不審な文字が書き残されているのを発見した。殺人の可能性を考えた彼は、2件の自殺を改めて捜査することに。二人の死者は、死の前日に自殺未遂を起こし、南波と雪耶に止められていた……。
自殺──それも連鎖する自殺をめぐるいくつもの事件が並走して、見たことのない風景を見せてくれる。
主な登場人物のほとんどが、心に闇を、過去に秘密を抱えた不安定な存在として描かれている。ところどころに強引な箇所もあるけれど、事件を通じて人々の闇と秘密が浮かび上がる過程も、本作の魅力の一つだ。
過剰に登場人物たちの間に過去の因縁を設けようとしているせいで、人物造形が不自然になっている点は否めない。だが、「自殺の連鎖」というとらえどころのないターゲットに挑むストーリー展開は、十分にユニークで、独自の輝きを放っている。
(古山裕樹)















