第6回『このミス』大賞 次回作に期待 古山裕樹氏コメント
『亡霊は昼歩く』 歌堂敏彦
『帝国の星の時間』 大木尚人
『沈底魚』 南木正三
古山裕樹コメント
他の1次選考委員のコメントにもあるとおり、回を重ねるごとに応募原稿の水準が高くなり、選ぶ側としては大変だけれど楽しい……というのが毎年この時期に感じることです。以下の3作は、1次通過作品にも見劣りしない個性を備えた作品でした。
歌堂敏彦『亡霊は昼歩く』は最後まで迷った作品でした。霊が見えてしまう特殊能力を持つ私立探偵の設定も、その皮肉の効いた語り口も印象に残るものでした。人気霊能者のピンチヒッターという事件への導入も、面白く読みました。ただ、彼の引き受けた事件そのものに魅力が乏しいのが残念でした。フィクションの世界では、あまりにも多くの猟奇殺人が描かれているだけに、その異常さだけではもはや印象に残りにくいと思います。探偵の魅力に負けない、凝った事件での次回作に期待しています。
大木尚人『帝国の星の時間』は、大戦秘話として楽しめました。ただ、あまりに多くの要素を詰め込もうとしたため、ミステリとしての仕掛けに関わる部分の印象が薄くなっている、と感じました。それだけ、詰め込まれた個々の話題が魅力に富んでいる、ということでもあるのですが……。贅肉の多さが惜しまれます。
南木正三『沈底魚』は、90年代の日本と中国を舞台にしたスパイ物。胡耀邦や胡錦涛を絡めた緻密なプロットは優れていましたが、その演出はもっと効果を発揮できたのではないかと思います。例えば、駐日公使の正体は本作の重要な部分ですが、肝心の彼の存在感が希薄なので、正体を明かされても「誰だっけ?」となりかねません。ほか、ネットや携帯電話といった通信インフラの描写が、10年前と言うよりは現代そのもので、ちょっと違和感がありました。
第53回江戸川乱歩賞受賞作も、『沈底魚』という題名の日本と中国を舞台にしたスパイ物ですが、もちろん両者はそれぞれ別の作品です。作者も別人で、内容も全く異なります。















