第6回『このミス』大賞 1次通過作品

『亡霊台風』 平野晄弐

 台風。日本人にとってなじみの深いこの自然災害が、物語の主役である。

 時は十年ほど先の未来、温暖化の影響を受けつつある日本。第二次伊勢湾台風と呼ばれる巨大台風の惨禍をきっかけに防災省が設立され、実働部隊・通称「台風ハンター」が出動し、特殊装備によって台風を人為的に消滅させていた。しかしその年、これまで発生したことのない特異な現象が観測されていた。何度倒してもゾンビのように再び起きあがり、同じ進路を通って繰り返し日本に近づく謎めいた台風──通称「亡霊台風」。この異常気象の原因はどこにあるのか?人為的な台風消滅が、地球環境に影響を及ぼしたのだろうか?一方、防災施設をめぐる談合疑惑を追っていた新聞記者は、談合よりもはるかに巨大な謀略の渦に、自分でも気づかないうちに巻き込まれていた……。

 最初に思い浮かべたのは怪獣映画だった(そもそも、国産怪獣映画ではしばしば台風上陸を連想させる表現が用いられる)。強大な力で暴れ回るものが日本に襲来し、政府は秘密兵器を用意してそれを迎え撃つ。基盤にあるのはこの構図だ。

 怪獣映画風味の災害パニックを核に据え、台風退治の大義をめぐる主人公たちの葛藤、さらには日本社会を狙った巨大な陰謀を重ねながら、シンプルにしてストレートな物語を作りあげている。謀略(と呼ぶにはいくぶん単純ではあるが)の要素も、単なる物語の味付けにとどまらず、自然災害と密接に連動している。

 なお、本作は第5回の最終候補作のひとつ『大地鳴動し 霊山咆哮す』の作者によるもの。私は『大山鳴動〜』は読んでいないけれど、第5回の選評から推測する限りでは、本作も前回と同じ弱点を抱えているようだ。とはいえ、そうした欠点を吹き飛ばすほどの力強さを備えた作品だと考えている。

(古山裕樹)

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