第6回『このミス』大賞 1次通過作品
『蝉コロン』 卯月未夢
卯月未夢氏は、前回の『このミステリーがすごい!』大賞で最終候補に残り、惜しくも受賞こそ逃したものの、WEB読者からは高く評価され、「準WEB読者賞」作品に選ばれている。今年も連続しての応募となったわけだが、今回の作品『蝉コロン』はというと、いわゆる「日常系ミステリ」である。
主人公の有城千里は、法人会員制のライブラリーで司書として働く一方、ミステリ作家を目指して小説を書き続けている二十四歳の女性。祖母が亡くなったために東北のY県天堂市へ帰省し、この機会に長期の夏休みを郷里で過すことにする。
幼なじみの久美や成瀬と再会した千里だったが、帰省生活の日常の中、(過去のものも含めて)幾つもの謎が降りかかって来る。高校時代、さくらんぼ畑の中から誰かに見つめられたと言う成瀬。子どもの頃、友人が宇宙人にさらわれたという同級生……。
千里は、それらの謎を解き明かしていく。一方で、東京にいる恋人の高村午後との関係を考える度に、心が揺れる……。
章ごとに重ねられるエピソードには、連続殺人事件や銀行強盗のような犯罪は登場しない。日常の中から現れた、それでいて不可思議な謎ばかりである。作者の卯月氏本人の実体験に基づくと思われるだけに、田舎の描写もいきいきとしている。主人公の千里も、卯月氏の分身だと断じて過言ではあるまい。すんなりと、安心して読み進めることができる。応募常連(もうそう言っていいだろう)なので、文章も手馴れている。
ただ、謎があまりにも日常的に過ぎる場合があることや、エピソードによっては途中で展開はおろか結末まで簡単に予想できてしまうのが残念。
しかし、その爽やかな読後感は気持ちがいい。キャラクターたちと一緒に、田舎の夏休みを過ごしたような気分になる。2次選考へ進むには、充分な出来だろう。
(北原尚彦)















