第6回『このミス』大賞 次回作に期待 村上貴史氏コメント

『JJJJ』 四ツ辻堂
『ダイエットカジノ 〜君の脂肪は三千万円』 藤澤法彦
『原始の闇─BSE』 澤田石怜
『白い夢』 九龍香

村上貴史コメント

 最後の最後まで迷ったのが、四ツ辻堂『JJJJ』である。カジノでのいかさま行為の真相を探る羽目になったJJことジョーカー・ジューが、友人のポルノショップの雇われ店長リンゴーが殺された事件の真相も(自主的に)調べ始め、その町の闇に迫っていくという小説である。孤児院出身で減らず口の多い主人公JJという造形がまずしっかりしており、同様に脇役陣の造形もしっかりしている。また、闇を描く筆力も確かである。さらに、幼児ポルノやスナッフフィルムというキワモノを扱いつつ、作品そのものはゲテモノに堕落しないというバランス感覚も評価したい。もちろん冒頭から結末まで一気に読ませるストーリーの力強さも備わっている。ではなぜ1次通過に至らなかったといえば、特に後半で視点の乱れが散見され、いかさま事件とリンゴー殺人事件があまりに乖離しており、さらには“全能のハッカー”により本来難題であるものが安直にクリアされてしまうといった欠点があったから。それ らが欠点であることを十分意識した上で次回作を書いていただければ(そしてそれらを意識するあまり全体が萎縮したりしなければ)、おそらく、この作者はものすごい小説を完成させるのではなかろうか。“日本のエルモア・レナード”なんて呼びたくなる作品すら出てきそうだ。次回作に期待したい。
 その他の注目作について。藤澤法彦『ダイエットカジノ 〜君の脂肪は三千万円』はコンゲームとしての魅力を備えていたが、タイトルで前半のネタを明かしてしまっているのがもったいない。澤田石怜『原始の闇─BSE』は、BSEと殺人捜査という異質のものをいささか手付きはぎこちないが一つにまとめ上げた点を評価したい。読者への情報の提供の仕方に優れていた一篇。九龍香『白い夢』は、娘の自殺について不慣れなネットを探る父親の物語。最後まできっちり読ませる力量はあるので、無難さをどこかで逸脱する冒険も試みて欲しい。
 全体的な傾向としては、ハセベバクシンオーの劣化コピー的文章で書かれた小説が多かったのにはげんなりした。オリジナリティについて、もっと意識を高めていただきたい。また、今回も他の賞での落選作を再投稿してきたケースが見られた。高村薫や貫井徳郎がプロとして自分の作品を改稿している現代において、大幅な再構築もせずに横流しというのは、試合放棄同然の行為と認識して戴きたい。その一方で、無理矢理枚数上限まで引き延ばしたような作品が少ない点には好感が持てた。こちらは来年も同傾向であって欲しいと願う。

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