第6回『このミス』大賞 1次通過作品
『神棲む森の旋律(うた)』 水木ゆうか
心や体の健康に悩む母と子を集めて、泊り込みのセミナーが開催された。主催するのは、東洋医学を基盤に、自然の力による治癒を掲げる「緑癒会」。物語は、参加者たちを乗せたバスが、深い森に囲まれた「緑癒ハウス」に到着するところから幕を開ける。
外部から隔離された空間で、独自の考えを繰り返し説いて、参加者に内省をうながすセミナー。だが、その進行について行けず、反発を強める者もいた。やがて、ある参加者の遺体が、森の木に吊るされているのが発見される。それをきっかけに、会には不穏な気配が漂いはじめる。それはやがて敵意と策略に姿を変え、この組織の権力構造をも揺るがし始める……。
閉鎖的なカルト集団の内側を舞台に、その人間関係が生み出すサスペンスを描いた作品である。カルト集団というテーマは今や珍しい題材ではなく、他の応募作にも同じ題材を扱ったものがいくつか見られた。その中で本作が突出していたのは、手堅い人物描写と、それを土台にした緊密な構成である。
カルトを動かす人、引き込まれてゆく人、拒絶反応を示す人。そうした人々の心の動きが、さまざまな視点から語られる。人々を単純に加害者と被害者に分けるのではなく、ある場面で被害者だった人物が、次の瞬間には加害者と化すことも少なくない。そんな複雑で不安定な人間関係を、的確な人物配置によって読みやすい形で描いている。
閉ざされた場での人間関係の緊張は、やがて壮絶なカタストロフィにたどり着く。ここで物語の舞台は閉じた空間から飛び出して、さらに新たな視点を取り入れることになる。後半の内容に関わるため詳しくは書けないが、緻密さに支えられた大胆な展開も、この物語の大きな魅力だ。
カルト集団という組織の危うさが生み出す不安と妄執。そのいびつな力がもたらす悲劇を、最後まで緊張を途切れさせることなく描ききった作品である。
(古山裕樹)















