第6回『このミス』大賞 1次通過作品

『神様のいる場所』 武川エコ

 ヤッホー、ホラー大好き!生意気なやつは皆殺しだっ!

 おっと。つい私情が入って文章が乱れてしまった。本篇は、とある禁忌の森を舞台にしたホラー小説である。十八歳の桃子が、夏休みに住み込みで旅館のバイトをすることから物語は始まる。その土地は山岳宗教の聖地となっている場所で、泊り客のほとんどは巡礼登山にくる信仰者だった。桃子は自分と同じようにバイトとしてやってきた六人の男女とともに働くのである。シーズン中ということで忙しい日々を送るうちに彼女は奇妙なことに気づく。旅館を経営する大崎家のひとびとは、何事かを隠しているようだ。立ち入ってはならないと言われている禁忌の森に秘密の鍵はあった。森は、ある悲劇の舞台となった場所だったのである。避けがたい運命が七人の男女に忍び寄ってくる。

 入らずの森という怪談的な題材が、現代的なホラーの素材へと変化していく趣向が楽しい(というか怖ろしい)。前半では七人の男女の青春模様が描かれているのだけど、それもモダンホラーの常道でしょう。男女七人夏物語だ(血しぶきつき)。物語は一点に収斂していく。それが仰々しくなく、悪くいってしまえば下世話な展開であることにも私は好感を持った。ええと、特に男子は怖い思いをすると思います。生理的にいやーな展開が待ち構えているのである。スプラッタ・ホラーというほどの爽快感はないのだけど、人の悪意や怨念をきちんと書き、悲劇の因縁話にまとめてある。ここで描かれる負性の感情に、共感する人も多いはずだ。作者がそこまで意図したのかどうかは不明だけど「今に見ていろでございますよ」(by古尾谷雅人)と呟きたくなる、どす黒い香気に満ちている。

 ただし、不足している部分は多いと思うのだ。もっとえげつなく、もっと救いなく書いたほうがいい。受賞の際には、『このミス』大賞初のR18指定になるくらいの改稿を望みます。それじゃ売れないか。

(杉江松恋)

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