第5回『このミス』大賞 1次通過作品
『鬼流院隼人探偵事務所 ネットを彷徨う亡霊を追え』 黒沢冬二
実に巧妙に架空請求詐欺を働く悪党がいた。警察はその犯人を八号と呼ぶ。彼を捉えるために駆り出されたのが、私立探偵・鬼流院隼人。フェラーリを駆る彼は、そのコンピュータに関する能力を活かして八号を追い詰める……。
タイトルで損をしていることは間違いない。正直言って陳腐だ。しかも、そのタイトルに『鬼流院隼人探偵事務所 事件ファイル:一〇一三』などという冠がかぶせられているのである。そればかりではない、副題として『〜アナタはすでに犯罪者だ〜』なんていう文句まで書き添えられている。しかしながら、だ。そんなタイトルとは裏腹に、中身が一級品であることもまた間違いない。キャラといい展開といい、これはもう「本物」である。
そもそもが鬼流院隼人という名前の処理にしてからが鮮やか。このわざとらしい名前を、主人公の特徴付けの一環として見事に活かしている——蒲池紀夫というハードボイルドに憧れる貧乏探偵が、自分で自分に鬼流院隼人という名前を与えるという行動を通じて、思わず「とほほ」といいたくなるような彼の性格を的確かつコミカルに描き出しているのだ。それに対する八号の描写も優れている。天才犯罪者としての一面を描く一方で、どこか破滅願望を備えているかのようなドライビングを行う場面も挟まれており、キャラクターに奥行きと実在感が付与されているのだ。
その上で、八号の実行するコンピュータ犯罪の仕掛けが圧巻である。自分の痕跡を消しつつ犯罪を遂行するために八号は様々な策を弄するのだが、その策がとことん巧妙なのである。そして、そのトリックに気付く隼人をあいてに繰り広げる肉体的または電子的な追跡劇もまたスリリング。一気読み必至といえよう。
結末の余韻も味わい深く、大満足としかいいようがない——タイトルを除けば。
(村上貴史)















