第5回『このミス』大賞 1次通過作品
『虚実の焔』 荒川伊福
サンフランシスコで新聞記者を務めるマイケル。彼は、インタヴューに赴いた先で思わぬ事件に巻き込まれた。インタヴュー相手の大物慈善家が、射殺された上、部屋に火を放たれたのだ。しかも、その嫌疑はマイケルに降りかかってきたのだ。程なくその嫌疑は晴れたが、それは、すでにマイケルが怪しいという記事が他紙を賑わしてからのことであった。汚名返上のために事件の真相を究明しろと編集長に焚きつけられたマイケルは、ニューヨークに飛ぶ。前月に、その地で今回と全く同様の放火殺人事件が起きていたのだ……。
マイケルが放火殺人事件を端緒として、大がかりな陰謀に巻き込まれていくという小説である。正直言って、粗探しをすればいくらでも見つかる作品である。しかしながら、そんな無粋なことはしたくないと思わせるだけの“愉しさ”が、この作品には満ちあふれているのだ。例えば、この小説でマイケルは、ニューヨークに飛ぶだけでなく、バミューダへ、イタリアへと行動範囲を広げ、その土地土地で様々な冒険を繰り広げる。それだけアクティブに動き続ける彼の行動が、実に素直な正義感やプライドに支えられているのがまず爽やかだし、彼の行動のテンポも軽快である。もちろん、そうやって世界各地を移動していくことそのものの愉しさも(物見遊山ではないのだが)伝わってくる。そのうえで、陰謀のエスカレート具合にもワクワクさせられるし、それを導く謎の画家や奇妙な入れ墨といった小道具もきちんと活かされている。
粗探しをすればいくらでも、と書いたが、その粗とは例えば、観光ガイドブック風の風景描写や、主人公に(ときには作者に)都合良すぎる展開、大陰謀の割に安普請と感じさせてしまう掘り下げの甘さなどである。そうした欠点が2次選考でどう評価されるか。新人賞においては、「打たれ弱さ」はときに致命傷となるが、そうした可能性を考慮に入れた上でも、2次選考にあげたいと思わせる作品であった。
(村上貴史)















