第5回『このミス』大賞 1次通過作品

『暴威の王-ultraviolenceoverlord-』 暮逆京助

 ずいぶんとお行儀の悪い小説です。文章はそうでもない。乱暴に書き飛ばしているように見えて、実はきちんと計算された文章です。でも携帯はぴぴるぴぴぴるぴと鳴るし、濫用されるオノマトペに読者によっては違和感を覚えるかも。個人的には鬱鬱欝鬱鬱とか、蜘蛛×蜘蛛×蜘蛛(×はたぶん『かける』と読む)とかいったタイポグラフィーは嫌いじゃないです。「フラグは立ててないけどな」といった、ゲームシナリオを思わせる冗句混じりの文章は生真面目な読者を苛立たせようとする作者の悪戯だろうけど、寛大な心で笑って許せる。下品な場面の連続も、むしろ好みであります。本当、私を笑わせるために書かれた小説なのかと思いましたYO!(というような無意味に崩した表現も散見される)

 お行儀が悪いというのは、そうした弄りまわされた文章のことを言っているのではない。構成の問題であります。主人公がオカマを掘られた腹いせか突然アナルセックスにのめりこむ唐突な展開の後。自分で書いていてなんちゅう説明かと思ったけど、まさにその後。あ、ついでにあらすじを書いておくと、伝説のチーム〈蜥蜴王〉の解散後ヤクザの手先として冴えない日々を過ごしていた主人公が新興の〈琵琶法師〉というチームと衝突したことから再び血で血を洗う抗争の中へと巻きこまれていくというものであります。あ、こんな感じのトンチキなネーミングもこの作品の長所だ。〈シャンプー法度〉とかね。それはいいんだけど、後半の展開が焦りすぎなのはなんとかならないものか。一気に登場人物は増えるし、唐突に南島に飛ぶことになるし。箇条書きで謎を説明する終盤部もなんだかなという感じで減点ものです(そしてラスト……)。減点主義なら文句なく1次落ちの作品なんだけど、前述の笑いや、主人公が終盤で見せる非情な顔などに魅力があり、どうしても落とす気になれませんでした。2次選考のみなさん、ごめんなさい。これ、通します。

(杉江松恋)

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