第4回『このミス』大賞 1次選考 次回作に期待

『不等式』 高山月光
『ランドキーパー』 小池康弘
『絆』 橋本侑太朗

古山裕樹コメント

回を重ねるごとに、全体の水準が高くなっていると感じます。どの作品を通すか、非常に悩みました。特にこの三つの作品は、通過作品との差はごくわずかだっただけに、作者の方にはぜひ再チャレンジしていただければと思います。

『不等式』高山月光
盗撮によって人々を脅して隷属させ、自らの「王国」を築こうとした男の物語。無機質な不快感が印象深く、また主人公をダブル・バインドの状態に放り込むラストが効果を上げている作品でした。今回、惜しかったのは、その「盗撮による隷属」の説得力です。ほんとうにそれだけで、あんなに思いのままに操られてしまうのか……? という点。隷属した人々の描写が鮮烈なだけに、かえって気になってしまいました。

『ランドキーパー』小池康弘
毎回、北朝鮮を扱った応募作を一編は読んでいるのですが、これまでの「北朝鮮もの」の中で最も読ませる作品でした。その特殊な軍事情勢を利用して見せ場を作るなど、題材に合わせた工夫が見られるだけでなく、極限状況のサバイバル描写にも力が入っていました。

ただ、二人の主人公のキャラクターが似通っているのが気になりました。どちらも愛する女性を北朝鮮に人質に取られた状態で、しかも戦闘能力に長けている。特に片方は、いくら鍛えているとはいえ普通の会社員なのですから、あまりに強すぎると感じました。

『絆』橋本侑太郎
未成年者の犯罪をテーマにした作品。小さなどんでん返しを随所に仕掛け、さらに物語全体に大きなどんでん返しを仕掛けて、丁寧に伏線を張ったところが優れていました。ただ気になったのが、作品の持つ衝撃が、結局のところ少年犯罪を扱ったノンフィクションの衝撃と同質である、というところ。緻密な描写に支えられた力作だけに、今後に期待したいと思います。

通過作品一覧に戻る