第4回『このミス』大賞 1次通過作品

『人体愛好会』 方波見大志

 最初に書いてしまうと、この作品は第12回日本ホラー小説大賞の1次予選通過作品である。同賞の最終候補作が決定したのが本年2月、本賞の〆切が5月末、3ヶ月の間にどの程度のことが可能だったのか定かではないが、改稿の上本賞に応募したのだという。他賞の落選作と聞けば、それだけ批判的な読み方をしなければならない。にもかかわらず、本作については残すべきだという判断をした。

 高見広春『バトル・ロワイアル』の成功以来応募作の中に多く見かけるようになった、デスゲーム小説である。人体の部位を模したカードを使ったゲームで、攻撃・防御・特殊と分類されたカードは全部で三十種八十五枚。プレイヤーはカードそれぞれの複雑な役割を憶え、戦略を立てるのである。それぞれ最初の持ち金は百万円で、脱落すると他のプレイヤーに奪われる。賭け金はおのれの人体のパーツを担保としているため、脱落者には相応のペナルティが課せられるのである。主人公はこのゲームで連覇を果たしている雨宮薫という人物。彼にはカードゲームに有利な能力があったのだ。

 ゲーム小説として見た場合ゲームの独自ルールが一目で判りにくいという弱点がある。カードの種類が多いため、すべてを一度にさらけ出すことができないのだ。それが作者のジレンマでもあっただろう。カードの種類を半分以下に絞り、冒頭ですべてを開陳した上でゲームを進めていれば、本書はもっとわかりやすいものになったはずである。また作中では、生き残りを賭けたサスペンスの盛り上がりよりも、ゲーム自体への関心の方が強くなっている。つまり、ホラーというよりは一種の賭博小説になっているのだ。そのへんの齟齬がホラーの賞で敗退した最大の理由だろう。しかし、エンタテインメントのはば広い可能性を探ろうとしている本賞の場合、それは必ずしも致命的な瑕ではない。死の誘いにハラハラしたい読者もいれば、ヒリヒリする賭博の快感に身をゆだねたい読者もいるだろう。そうした要望に応じられるほどに、本作のゲーム場面は緻密に描写されている。『遊戯王』だとか、カードバトルの作品は他メディアにいくらでもあるじゃんという声もあるだろうけどさ。バトル場面を小説で表現しようとした意欲を私は買いますよ。

(杉江松恋)

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